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仕上げについて

小径木とは
森林内では若齢の、直径3〜20cmぐらいまでの樹で、高木の幼木、もともと背の低い小低木や、用材を利用した後に残る枝のことを「小径木」と呼んでいます。樹の種類としては、ナラ、クリ、カエデ、クルミ、キハダ、ヤナギ、ヤマザクラ、ホウ、コシアブラ、ウワミズザクラ、クワ、リョウブ等、落葉広葉樹を使っています。
それぞれ特徴があって、どれも好きです。再生が速く、樹種によっては6年ぐらいで、直径5cmくらいに育つので、椅子の脚には十分使えます。こうして育った木で作ったいすは、雨に当てない、にオイルワックス等を表面に浸み込ませてやる、座を張り替えてやる等のメンテナンスさえすれば長持ちします。1000年かけて育った木を使うなら、1000年もつお宮を建てなさいと宮大工の世界では言われるそうですが、10年かけて育った木を使って50年もつ椅子を作れば、その椅子が壊れてしまうころには、すばらしく立派な樹が育っていると思うとすごく楽しい気持ちになります。
もうひとつ小径木の利点をいうと、どんなに曲がりくねった木でも、元から先まで目が通っているので、細い木でも粘り強いということです。そんなことからも、思いがけないデザインが生まれてくるのです。


小径木ならではの曲がりから生まれてくるデザインです


小径木丸太に柿渋(かきしぶ)を塗って仕上げた風合いです


ナラの小径木を使って組んだジャングルチェア枠


小径木の乾燥。虫食いを防ぐため屋内にて


削りだしとは
小径木丸太に対して、削り跡をあえて残した仕上げ方法を「削り出し」と名づけました。直径30〜80cmぐらいまでの、立派な樹を、製材所で大きな帯のこと呼ばれる製材機で好みの厚さに挽き割った板材を仕入れ、デザイン、注文に合わせ、自分の工房で好みの大きさ形に挽き、家具の部材として使います。
同じデザイン、形のものをたくさん効率よく作りたい時にはこのような材料を使います。
曲がった木も当然あるので、これを平らに挽き割るため、場所によっては目の通っていない部分も出てきます。
椅子の脚など、細くて強度を出さなければならない部材をとる場合は木目を読んで、目切れを起こさないように、注意深く木取りします。部材を必要な形大きさに加工し、ほぞ穴、ほぞ、みぞなど組み立てるための加工をします。
その後仕上がりによっていろいろな方法で仕上げますが、その仕上段階で、下左の写真の銑(せん)を使って、削り跡を残した仕上げをしています。この素朴な感じがとても好きです。良く切れるように研いだ銑を使って削った面は、ぴかっと光って、光を反射します。塗装が落ち着いてきて艶が増してくると、ますますこの"面"が生きてきます。
この面は、古い民家の丸太梁にみられる、ちょうなではつった面に似ています。100年以上囲炉裏の煙でいぶされすすによって真っ黒になった表面を磨くと素晴らしい光沢が出ます。この"面"の連続が作り出す風合いがすごく好きで、椅子の部材の表面の仕上にしてみようと思いました。これには、銑という道具が打って付けでした。銑は、桐下駄職人の使う道具です。
知人のお父様が桐下駄職人で、その形見を分けていただきました。昔の刃物の鋼は素晴らしい切れ味を出してくれます。
削りだしの場合サンドペーパーは最後まで使わず、銑、曲面ガンナ、南京ガンナ、切り出しナイフで仕上げます。刃物の作り出す素朴な趣は、永く使っていくうちに、なんとも言えない味が出てきます。


銑(せん)


削り出しに拭き漆で仕上げた風合いです


屋外で3年以上桟積み乾燥後、屋内へ立てかけ作品になるまで出番待ち


削り出しにオイルフィニッシュクリアー(植物性自然塗料)で仕上げた風合いです


通しほぞクサビ止め
私の作る椅子の仕口は、主に"丸ほぞ通しくさび止め"を使っています。強度を出したい要所要所に使います。
穴を貫いて、割れ目を入れた通しほぞを挿し、反対側からクサビを打ち込みます。それぞれに接着剤も塗ります。
乾いたところで、出過ぎたほぞを切り落とし削って平らにすると左の写真のような、ヤギの瞳のようなかわいい模様になります。自然木丸太等、平らな基準面を持たない部材を加工するときに、この仕口は最適です。
簡単で単純で、とても粘り強く、丈夫な組み方です。組み立てる時に、クサビを打ち込む時の快感は、たまらなく好きで、「これでもう抜けないぞ」という安心感と同時にクサビを打ち込むごとにみるみる頑丈になっていきます。
もうひとつ、通しほぞの利点は、メンテナンスが簡単ということです。もしもほぞが緩んできてしまった時には、もう一度新たにクサビを打ち込んであげればもうそれだけでがっちりです。穴を貫き、ほぞを通すというのは、家の建て方から言うと、ぬき構造と呼ばれる伝統工法で多く使われる方法で、社寺建築、昔からの民家や土蔵の木組みに使われているとても粘り強い組み方です。民家の解体を手伝っていた頃があるのですが、大黒柱にしっかり挿された差物の梁が組まれた家をつぶすのに苦労して、この粘り強さは実感しました。それに反して現代の工法で建てられた家のもろいこと。これは解体屋さんが一番良く身にしみて知っていることと思います。


貫いたホゾにクサビを打ち込み固定


接着剤が乾いた後、削り平らに仕上げる。丸ホゾとクサビがデザインのワンポイントに


あぐら、正座椅子の組み立て


塗装について
柿渋(かきしぶ)
日本古来の塗料です。青柿の絞り汁を発酵させたものです。柿渋の主成分であるタンニンには、防虫、防腐、防水、抗菌効果があります。和紙で作られた番傘、竹ざる、水桶などにも使われてきました。家具の仕上げ塗料として使うと、上のような効果と共に深い赤茶色に変化する、経年変化を楽しめます。私の作る家具の場合、柿渋だけだと、表面の皮膜が少し弱い(毎年塗り重ねればそれは素晴らしい色になると思いますが)ので、上塗りとして、自然塗料のオイルワックスを塗っています。
こうすると、もっとゆっくり色が変化します。数年たって、「あれっ、こんなにこの家具、色が変わってる」と気づくと思います。柿渋自体は、使い慣れると私はわりと好きな匂いなのですが、一般的には、とても臭くて、塗って帰ってきた日は「父さん,くっちぇえ」と、子供にも言われてしまうのですがしっかり乾いてしまえば、匂いは消えるのでご安心を。

漆(うるし)
これも日本古来の素晴らしい塗料のひとつです。乾かす方法が特殊で、温度と湿度を必要とします。ふろと呼ばれる、部屋で乾燥させます。大きい作品だとそれなりの場所と設備が必要になってきて、やはり職人の長年の勘が物を言う世界なので今のところ自分では手を出していません。塗師に頼んでやってもらっています。初めて自分の作品が仕上がって帰ってきたときには、本当にこれが自分が作った作品なのかと見間違えるほど感動しました。それから拭き漆の場合、"すける"と言われる経年変化があります。特に、年輪の導管で漆をよく吸い込んだところは色濃く残り、吸い込みの少ない部分は色が薄くなっていくのです。塗って間もない頃は全体的に黒っぽいのですが、すけることによって、木目が浮き出てくるのです。それはそれはすばらしいです。その上漆の特性として、時間と共に皮膜が硬くなって木を保護してくれるのです。先人の知恵はすごいですね。

オイルフィニッシュ
木地の色をなるべく残し、家具を長持ちさせるために、表面を保護するためにオイルフィニッシュのクリアー(透明)というのを塗り込みます。自然の植物油をベースにした無公害塗料です。ウレタン塗料と違って塗膜を作らないので、木の呼吸をさまたげません。人体、動植物に安全で、子供のおもちゃの塗装にも使えます。何よりも塗装の作業の時に自分が気持ちいいのがいいのです。シンナーなどの有機溶剤系の臭いが全くないので気持ち悪くならないのですシンナー系の塗料は、私の体が受け付けないようで、もうこのような塗料は使えません。

自然系塗料の欠点
私としては、欠点とはあえて言いたくないのですが、傷やシミがつきやすいということです。テーブルでは顕著で、下敷きなしで紙に字を書くとそのまま木に写ってしまいます。湯飲みなどを引きずると傷がつきます。醤油等こぼすと急いで拭かないとシミが残ってしまいます。大手家具メーカーが使用している、まるで表面をプラスチックで覆ったような塗装だと、こういうことはないのですが、どうしてもそこまで強い塗膜は、自然系塗料では作れないのです。もうひとつは、永久に持つものではないので、2.3年に一度は再度塗りこんであげる必要があります。もうすでに下地はできているので、少量のオイルでよく伸びます。長年使っていれば傷も汚れも当然付いてきます。傷や汚れさえ深い艶となって、これこそ年月にしか作り出すことができない"味わい"となってきます。椅子やテーブルなどを裏返すことなど普通の生活では、引越しでもない限りあまりないことだと思いますが、こうして手をかけてやればやっただけ物に対しての愛着も増して、かわいくなることと思います。
そんなことから、傷やシミがつきやすいという事は、物を大切に使う、かわいがるという観点から見ると、利点なのかもしれない。と思うのです。一般的には欠点としてこのようなことがあり得るということを了解した上で、手に入れてください。